連載コラム!

NAUI × ずかんくん

沢山知って、ダイビングを
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はじめまして!このたび『ダイビング指導機関NAUI宣伝隊長』に就任いたしました!海の生き物大好き!イラストを描くのが大好き!ずかんくんです!
広い海にはどんな生き物たちが暮らしているのか?『沢山知って、ダイビングをもっともっと楽しんじゃおう!』をテーマに、毎回登場する生き物を変えながらお話していきます!

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ずかんくん

第7回 ずかんくんコラム 
10月のテーマ「チンアナゴ」

「チンアナゴ」

海は広い!魅力的で不思議な生き物がまだまだたくさんいます!
今回ご紹介する魚の名前は、全国水族館で絶大な人気を誇る「チンアナゴ」です。
不思議な魅力を持つ、この魚には、ファンがとても多く、バッグや靴下、ダイビングフロートなどのグッズ化もされています。
チンアナゴには「癒しの雰囲気」があると思います。
見た目のかわいらしさに加えて、くねくねと体をくねらせ、のんびりと海底にたたずむその独特な動きを眺めていると、なぜだかとっても癒されます。

チンアナゴは、砂の中に体の半分以上をうずめて、群れで海底にたたずんでいます。
単独で行動することはめったにないと言われています。
くねくねと体をくねらせ、砂の中に体を入れたり、ひょこっと出したりして穏やかに過ごしています。

ついつい水族館でチンアナゴ水槽の前で長居してしまう、ずかんくんですが実はチンアナゴについて詳しいことはあまり知られていません。

いったいチンアナゴは砂から顔を出して、何をしているのでしょうか?
普段見ることができない砂の中で、体はどうなっているのでしょうか?
チンアナゴの隣に、違う模様の似た魚がよくいるけど何という魚なのでしょう?
スキューバダイビングをすると野生のチンアナゴに出逢えるのでしょうか?
今回のコラムでは、大人気のチンアナゴの謎に迫っていきます!

チンアナゴってどんな魚?

チンアナゴは「ウナギ目アナゴ科」に分類される魚です。
水深10m~50m位の、主に熱帯サンゴ礁の砂底に穴を掘り、穴から体の前半部を出して生活していますが、それ以外にも、海藻が密集しているような場所に住みつくケースもあります。
チンアナゴは全長35cmから40cmくらいありますが、体の半分以上を砂の中に隠していて、基本的に穴から飛び出て全身が見えるように行動することはないので、生きたチンアナゴを観察して、その長さを知ることは難しいです。
チンアナゴは体の2.5倍ほどの深さの巣穴を掘ります。
生息地は、インド洋・西太平洋の熱帯域で、日本近海でも小笠原諸島、静岡県、高知県、屋久島、琉球列島に主に分布しています。

アナゴといってもアナゴではない?!

アナゴと聞くとお寿司屋さんで食べる、私たちの食生活になじみ深いマアナゴを連想してしまうかもしれません。
マアナゴもチンアナゴも、確かにどちらもアナゴ科の魚ですが、
チンアナゴは「チンアナゴ亜科チンアナゴ属」に含まれ、マアナゴは「クロアナゴ亜科クロアナゴ属」に分類される魚なので、厳密には両者の関係性は遠いと言えるのです。

アナゴやウナギは嗅覚がとても優れていて、主に嗅覚を頼りにエサや外敵を判別していますが、チンアナゴが主に頼るのは「視覚」です。
チンアナゴを観察してみたとき、目がキラキラくりくりしているように感じませんか?
チンアナゴは砂から体半分を出し、優れた視覚の力でキョロキョロと餌や外敵を判別しているのです。
顔つきはというと、アナゴは上あごが出ていますが、ウナギは下あごが出ていてしゃくれ顔をしています。さてさてチンアナゴは??

ウナギ
マアナゴ

名前は珍アナゴ?

チンアナゴの「チン」ってどこから来ているのでしょうか。
見た目も生態も不思議で珍しい魚なので、
つい「チン」は「珍」と連想してしまいそうですが、
実は意外にも日本原産の犬種「チン」に似ていることから名づけられたとされています。似ている?
似ていない?どう感じるかは、あなた次第です。
ちなみに英名は「spotted garden ell(スポッテッド ガーデン イール)」と言います。
意味は「斑点のある 庭の ウナギ」で、チンアナゴは体に斑点があり、海底から体を出す姿が、庭で伸びる草木のように見えることから名づけられたとされています。

チン

実はチンアナゴは、自然環境下では潮の流れに乗って流れてくる動物プランクトンを待ち構えて捕食しています。そのためみんな流れのある方に体を向けています。
常にエサ待ち状態をキープしているわけですね。これは他の魚には見られないチンアナゴならではの特徴で、よく見える眼もエサを探すために必要なのかもしれません。
水族館では動物プランクトンの代替え品として「ホワイトシュリンプ」や「ブラインシュリンプ」を与えているそうです。

チンアナゴの群れ

表情豊かなチンアナゴたち

よく観察していると、同じチンアナゴ同士で喧嘩することがあります。
口を大きく開け、互いに威嚇し合います。それなりに怒った様子の顔に見えますが顔自体や、目が小さいので、喧嘩する姿も私たちの目にはかわいらしく映ります。喧嘩の理由はエサを横取りされたのだろうかと、つい想像が膨らんでしまいます。他にもチンアナゴは臆病で外敵が近づいて来ると、砂の中に素早く身を隠して相手がいなくなるのを待ちます。このときのあわてて隠れるチンアナゴの不安そうな表情もかわいいのでぜひ観察してほしいと思います。

喧嘩するチンアナゴ

チンアナゴの体のヒミツ

チンアナゴは尾びれの先からドリルのように砂を掘り穴に入ります。
体の2.5倍ほどの深さの巣穴を掘り、尾びれの先から粘液を出して巣穴の壁を固めて崩れないようにしているのではないかと考えられています。

チンアナゴの特徴

  • ・眼は大きめです。
  • ・胸ビレはしっかりあります。
  • ・背ビレ・尾ビレ・尻ビレは繋がっています。
  • ・黒い斑紋は左右に2つずつで全4つと思いきや、肛門のところにも黒い斑紋があるので、実は体に全5つあります。
  • ・メスよりオスのほうが大きくなります。
  • ・実はチンアナゴの幼魚は体が黒いです。
チンアナゴ全身
チンアナゴの幼魚

チンアナゴとよく一緒にいるカラフルな子はだれ?

水族館で必ずと言っていいほど、チンアナゴの横にオレンジ色の姿でひときわ目立つ、チンアナゴの模様違いのような魚がいます。
チンアナゴとセットでグッズ化されるほど同じく人気の魚で、名前を「ニシキアナゴ」と言います。ニシキの名は「錦=にしき」のように体の色が美しいことから名づけられました。いつもセットで展示されるので近い仲間かと思われがちですが、チンアナゴは「チンアナゴ属」で、ニシキアナゴは「シンジュアナゴ属」に分類されます。
チンアナゴよりニシキアナゴの方が、さらに臆病だと言われていますので、観察の際に2種の様子をぜひ見比べてみてください。

ニシキアナゴ

チンアナゴに近い仲間

「ゼブラアナゴ」絶滅危惧種
沖縄本島近くの海であれば群れで生活する野生のゼブラアナゴが見ることができる。
ダイビングで海底を探してみよう。

ゼブラアナゴ

「ホワイトスポッテッド・ガーデンイール」

ホワイトスポッテッド・ガーデンイール

チンアナゴ最大の謎

長年チンアナゴの繁殖はどのように行われているか謎に包まれていました。
しかしついに東京にある「すみだ水族館」で、チンアナゴとニシキアナゴの2種について、産卵行動の動画記録の撮影を世界で初めて成功し、その謎が解かれることとなったのです。

  • ・2014年4月14日午前0時ごろ水槽の表面に卵が浮いていた。
  • ・受精卵の採取とふ化にも成功した。
  • ・チンアナゴとニシキアナゴの2種の違いは明確だった。
  • ・ふ化した稚魚は約10日で死亡した。
チンアナゴとニシキアナゴの受精卵 比較
チンアナゴとニシキアナゴ稚魚の姿 比較

チンアナゴとニシキアナゴは水中でメスが卵をばらまき、オスが精子をかけて受精します。
卵からふ化したばかりの赤ちゃんは透明で葉っぱのような形をしています。

  • ①メスが巣穴からカクカクとした動きで体を伸ばして放卵し、メスの放卵後にオスが巣穴から体を伸ばして放精する。
  • ②メス1匹と複数のオスが直線状に並び、放卵、放精を行う。
  • ※チンアナゴにはその行動は見られなかった。まだまだチンアナゴの生態の謎は深く、どうやってチンアナゴの稚魚が成長するのか分かっていません。そもそもこれまでウナギ目の産卵行動の動画記録について、文献による報告はされていなかったようです。

「世界初、チンアナゴ類の産卵行動の動画記録に成功(すみだ水族館)」より

11月11日はチンアナゴの日

チンアナゴの体を眺めていると何かの数字の形に似ているように見えませんか?

そうです!チンアナゴは数字の「1」に似ている面白い姿をしています。
さらにはチンアナゴの姿が数字の「1」に似ていることから、すみだ水族館が日本記念日協会に申請し2013年に11月11日は「チンアナゴの日」と正式に認定されることにもなったのです。

今回、水族館の大人気アイドルであるチンアナゴについてたくさんのヒミツと魅力をご紹介しました。更なる謎を解き明かすため、「11月11日チンアナゴの日」はぜひとも海中へ、そして水族館へチンアナゴに逢いに出かけてみてくださいね。

(参考文献・引用書籍)
・小学館図鑑NEO 魚(小学館)
・小学館の図鑑Z 日本魚類館(小学館)
・ポプラディア大図鑑 魚(ポプラ社)
・学研の図鑑 Live 魚(Gakken)
・講談社の動く図鑑move 魚(講談社)
・山渓ハンディ図鑑13 改訂版 日本の海水魚(山と渓谷社)
・山渓カラー名鑑 日本の海水魚(山と渓谷社)
・世界で一番美しい海のいきもの図鑑(創元社)
・日本産魚類生態大図鑑(東海大学出版会)
・日本産魚類検索 全種の同定 第三版(東海大学出版会)
・「世界初、チンアナゴ類の産卵行動の動画記録に成功(すみだ水族館)」