連載コラム!

NAUI × ずかんくん

沢山知って、ダイビングを
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はじめまして!このたび『ダイビング指導機関NAUI宣伝隊長』に就任いたしました!海の生き物大好き!イラストを描くのが大好き!ずかんくんです!
広い海にはどんな生き物たちが暮らしているのか?『沢山知って、ダイビングをもっともっと楽しんじゃおう!』をテーマに、毎回登場する生き物を変えながらお話していきます!

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ずかんくん

第3回 ずかんくんコラム 
6月のテーマ「イルカ」

僕は幼少のころ、愛知県の半田市に父の仕事の都合で住んでいたことがあります。
近くには南知多ビーチランドという、イルカを多く飼育する水族館があり、
海洋生物が好きな僕を、母がよく連れて行ってくれました。
南知多ビーチランドという水族館は、イルカと人との距離が、他の水族館よりも特に近いことで有名です。手を伸ばせば届きそうな距離でこちらに優しい表情で笑いかけてくれ、誘うように近くを泳ぎ、一緒に遊んでくれるイルカに、幼いころは初恋に近い感覚を覚えたことが、おぼろげながら記憶の片隅にあります。

イルカたちには、他の海洋生物にはない特有の表情と、感情の表現力といった魅力があり、愛くるしい見た目の内側には、驚くほど高度な身体能力や、イルカ特有の能力を持っています。今回は、知れば周りにちょっと自慢できちゃうような、イルカたちの秘密を紹介していきたいと思います。

「イルカ」

イルカとは何か?

イルカとは、そもそもどんな生物を指すのでしょう?
そしてクジラとの違いはなんでしょう?
実は、生物分類学上イルカとクジラの区別はありません。
クジラという大きなグループの中でまず「ヒゲクジラ」の仲間と「ハクジラ」の仲間の2グループに分けることができます。今は絶滅してしまいましたが、昔は「ムカシクジラ」という別のグループも存在していました。

「イルカ」という呼び名はニックネームのようなもので、生物学上正しい名前ではありません。
クジラの仲間のうち、口にヒゲがあるタイプを「ヒゲクジラ」の仲間、口に歯があるタイプは「ハクジラ」の仲間となり、歯を持つ仲間の中から「約4m以下」の小さい仲間のことを「イルカ」と呼んでいるのです。
分かりやすく例を出してみると、「マッコウクジラ」は歯があるクジラなので、ハクジラの仲間。

「マッコウクジラ」

「ザトウクジラ」はヒゲがあるクジラなので、ヒゲクジラの仲間。

「ザトウクジラ」

「シロナガスクジラ」はヒゲがあるクジラなので、ヒゲクジラの仲間。

「シロナガスクジラ」

そしてハンドウイルカは、歯があり、体が4mよりも小さいので、歯を持つ仲間の中で、かつ「約4m以下」に当てはまるため、「イルカ」と呼んでいます。
そうして分けていくと、ヒゲクジラは約14種類、ハクジラは約70種類存在しており、ハクジラの種が多いことが分かります。
シャチもハクジラの仲間ですが、体の大きさが4m以上なので「イルカ」とは呼びません。

「ハンドウイルカ(バンドウイルカ)」(体長3m~4m)

「ハンドウイルカ(バンドウイルカ)」

ハンドウイルカは、一番よく会えるイルカです。
ハンドウの名の由来は諸説ありますが、もともと和歌山あたりの漁師がオキゴンドウやマゴンドウなどと比べて、半分くらいの大きさであることから、「半道(はんどう)」と呼びました。
ハンドウイルカはイルカの中ではやや大きめでクジラとイルカの中間くらいの大きさというところから、半道と呼ばれたとも言われます。
他にも歌舞伎の世界の「半道(ハンドウ)」から来ていると言われています。
半道役は笑みを浮かべて観客を笑わせて和ませる役です。
ハンドウイルカの口角は常に上がっているため為、笑っているように見え、ちょっとずんぐりした印象のかわいいイルカです。

「ハンドウイルカ(バンドウイルカ)」

「ミナミハンドウイルカ」(体長2~3m)

比較的好奇心が旺盛で警戒心が少なく日本で一緒に泳げる種としては最もポピュラーな種類のイルカと言えます。特徴は沿岸に生息して、その地域に定住します。
ハンドウイルカよりやや小さめで、吻(ふん)は長めです。
2001年に別種と定義されるまで、ハンドウイルカとミナミハンドウイルカは同じ種とされていましたが、今では全く違う種ということが分かっています。

「ミナミハンドウイルカ」

イルカの体の特徴

鼻の穴が頭のてっぺんにあり、息継ぎをするのにとても便利です。
これは呼吸孔(こきゅうこう)と言い、まるで私たちが水中で使うシュノーケルのようです。
水中では穴を閉じ、水上に出たらまた穴を広げ、息を吸います。口では呼吸を行いません。イルカショーで聞こえるイルカの声はこの穴から出ている音で、超音波とはまた別の物です(ぴゅーい♪ぴゅーい♪)。

「ミナミハンドウイルカ」
「ミナミハンドウイルカ」

イルカにはヒトのような声帯が無く、鼻道のひだを振動させて音を出します。
ヒゲクジラの鼻の孔は実は2つ開いていて、ハクジラの鼻の孔は1つです。
体の周りには毛が無く、つるっとしています。口の周りには、赤ちゃんのときに生えていたヒゲの毛穴の痕跡が見られます。センサーのような役割をしていて、水流や水圧を感じる機能があると言われています。
イルカは皮下脂肪が多いので、水の中で冷えにくく、冷たい海でも体温を一定に保つことができますが、私たちヒトは、皮下脂肪が少なく、水の中ではとても体が冷えやすいのでウェットスーツを着ます。

イルカの胸びれは平たく船を漕ぐときに使うオールのような形をしていますが、私たちと同じ哺乳類なのでヒレの中にはちゃんと手の骨があり、さらによく見ると5本の指があることが分かります。

イルカのすごい特技!音を使い分けて生活する

イルカは鼻で話し、耳で見るとまで言われます。
水中では光はあまり遠くまで届きませんが、音は空気中の約4倍の速さで遠くまで伝わります。イルカは水の中で、岩などにぶつからずに泳ぐことが可能です。
また、エサの魚を追いかけて捕まえることができるのは音をうまく利用しているからです。
音はメロンと呼ばれる器官によって集められ前方へ向け発します。
これを「エコロケーション」能力と呼びます。
イルカは水中でいろいろな音を出します。「カチッカチッ」というようなクリック音は、エコロケーションのときに使います。
「ぴゅーい、ぴゅーい」という音はホイッスル音と呼ばれるもので、イルカ同士が話すときに使います。
ちなみにこのホイッスル音は、イルカによって違うそうです。「ガガ」や「キュ」と聞こえる低いうなり声は、何かに驚いたときや、オスがメスに求婚するときに使います。

「ミナミハンドウイルカ」

イルカの泳ぐ速度と潜ることのできる深度

私たちヒトは、どんなに早く泳ぐ人でもせいぜい時速10km以下ですが、イルカは時速15km位で泳ぎ、狩りなどの際に本気を出した場合は40kmも出すことができます。
イルカが速く泳ぐことができるのは、尾に、骨をくるむように発達した筋肉がついた「V字筋」を持っているからです。
ハンドウイルカは水深535mまで潜ることができること事が分かっています。海は水深200mを超えた時点から深海と呼ばれる世界となります。そこはもう、光の届かない世界です。イルカの目に頼らないエコロケーションの能力や40kmも出すことができる泳力は、そんな世界で狩りをするのにも役立っているはずです。

「ミナミハンドウイルカ」

イルカはなぜ長く潜ることができるの

体内から酸素が少なくなるとイルカたちは心拍数(しんぱくすう)を少なくします。
そして血液を心臓や肺など重要なところにだけ流すようにします。
つまり酸素の節約をします(ダイビングでも呼吸を整えることが大事!?)
沢山の酸素を体内に貯蔵して、同時に使い方を節約することがコツというわけなのです。

イルカは泳ぎながら寝る??

イルカたちは寝るときも水中です。
いつ敵に襲われるか分からない睡眠中は特に危険なのでイルカたちは脳を半分ずつ休ませることができる「半球睡眠」という能力を備えています。寝ているときは、泳ぐスピードがゆっくりとなり、眼を片目ずつ閉じて眠ります。
ときには水面近くでぷかぷかと浮きながら眠ることもあります。

イルカは泳ぎながら寝る??

イルカの尾の振り方から進化のヒミツが?!

イルカたちは私たちと同じ哺乳類です。
バタフライで泳ぐときの足の動きを「ドルフィンキック」と言いますよね?
これは縦に振るイルカの尾ビレの動かし方に似ているためです。
イルカは昔、オオカミのような姿をしていました。イルカたちの祖先は、陸上で暮らしていたのです。哺乳類から水の中の生活に適用し、進化して今の姿になった生物なので、私たちと同じく尾を上下に振るという縦の動きで水中を泳ぎます。魚類は進化の過程が違うので尾を横に振り水中を泳ぎます。サメも魚類なので、同じように尾を横に振り泳ぎます。過去に陸上に進出した進化をしていないためですね。

イルカたちは水中生活に適応し進化した生物なので、海で生き抜く高度な能力を沢山身に着けていることが分かります。今回ご紹介したものはほんの一例です。紹介したものの中にはダイバーとしては羨ましい能力もあったと思います。

イルカはとても魅力的な存在であり、海で出逢えば興奮すると思いますが、どれだけ愛らしい表情をもつイルカも、海に棲む野生の生物です。
私たちダイバーがどんなときも忘れてはいけないのは、私たちはイルカを含む海の生物たちの棲む場所にお邪魔させていただいているということです。適切な距離を守り、現地の観察ルールなどを必ず厳守して、イルカにとっても私たちにとっても安全なダイビングの実施を心がけましょう。

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広い海の青くん
(参考文献・引用書籍)
・広い海の青くん(Clover出版)
・イルカの不思議(誠文堂新光社)
・クジラ、イルカのなぞ99(偕成社)
・イルカ~海で暮らす哺乳類~(あかね書房)
・イルカ、クジラ大図鑑~おどろきの能力をさぐる!~(PHP研究所)
・わたしのイルカ研究(さえら書房)
・海にすむどうぶつたちから~日本の哺乳類Ⅱ~(岩崎書店)
・海遊館ガイドブック(海遊館)
・海遊館 ものしり博士シリーズNO5 カマイルカ(海遊館)
・名古屋水族館ガイドブック(名古屋港水族館)
・新着!海の生き物レター集Ⅰ(名古屋港水族館)