連載コラム!

NAUI × ずかんくん

沢山知って、ダイビングを
もっともっと楽しんじゃおう!

はじめまして!このたび『ダイビング指導機関NAUI宣伝隊長』に就任いたしました!海の生き物大好き!イラストを描くのが大好き!ずかんくんです!
広い海にはどんな生き物たちが暮らしているのか?『沢山知って、ダイビングをもっともっと楽しんじゃおう!』をテーマに、毎回登場する生き物を変えながらお話していきます!

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ずかんくん

第6回 ずかんくんコラム 
9月のテーマ「シャーク~サメの王国~」

「シャーク~サメの王国~」

サメに出会ってみたい?サメには出会いたくない?

サメと聞くと皆さんは「恐ろしい」と感じますか?それとも「魅力的」と感じますか?
海でサメに「絶対に出会いたくない」と思いますか?
それとも「実は出会ってみたい!」と思いますか?

サメについて詳しくなればなるほど、そして知れば知るほど悩む質問かもしれません。
なぜならば、サメという生き物は私たちの頭にある「怖くて凶暴」というイメージとは一概に言えないくらいに、とても多様性に溢れ、神秘に満ちた生物だからです。

サメと聞くと、多くの人が真っ先に頭に浮かぶのは、「ホホジロザメ」だと思います。
そして「ホホジロザメ」が「怖くて凶暴」というイメージが強いためにサメ全体が「怖くて凶暴」と思われがちです。

サメに出会ってみたい?サメには出会いたくない?

<海の王者・ホホジロザメ説明>
全長1.2m~1.5mで産まれ、オスは全長3.5m~4m、メスは全長4.5m~5mで成熟し、
全長は最大7mにもなる。世界中の海域に分布する。
沿岸の表層域に生息しているが、ときには大陸棚の海底付近に潜降することもある。
沖合や餌の哺乳類の多い海洋島の周囲などにも生息する。
よく「ホオジロザメ」と間違われるが「ホホジロザメ」である。

いかにもサメのイメージらしく鋭い歯、大きく強いアゴ、歯茎むき出しの恐ろしい口の中大きな巨体、追いかけられたときに逃げ切れるイメージの湧かない大きなヒレ、海のハンターとして完成されたその姿こそ、「海の王者サメ」の代表にふさわしいと言えます。

「ホホジロザメ」1種のイメージが強すぎますが、実はサメの仲間は約500種以上も存在しています。ホホジロザメも、約500種以上もいる繁栄したサメ王国の中のほんの1種でしかないのです。
表層に生きるもの、深海で繁栄するもの、手のひらサイズの小さいもの、私たちより遥かに大きい姿のもの。様々な海域に適応したサメは、それぞれに特異な見た目と生活史を獲得し、私たちダイバーを飽きさせない存在です。
まずはサメ全体に、おおよそ共通する基本的な生態をご紹介していきましょう。

知られざるサメのヒミツ①サメの口

ジョーズという言葉の意味!

「ジョーズ」という有名な映画がありますが、
意味自体はあまり知られていません。
「ジョーズ」は英語で「jaws」と書き、
日本語で「アゴ」という意味があります。
正確には複数形なので「両アゴ」という意味です。
ジョーズがアゴという意味ならば、
アゴを持つ皆さんも「ジョーズ」を持っていると言えるわけです。
私たちヒトとサメのアゴには違いがあります。
私たちヒトのアゴは頭蓋骨とくっついていますが、
サメは上アゴが頭蓋骨から独立しています。
そして下アゴとペアになって一緒に動きます。
サメの上アゴは頭蓋骨と離れているので、
口を飛び出させたりひっこめたりすることができます。

知られざるサメのヒミツ①サメの口

知られざるサメのヒミツ②サメの歯

一生のうちに生える歯は6万本!!

知られざるサメのヒミツ②サメの歯

人が一生に使える歯は、乳歯と永久歯を合わせて52本ですが、
サメは一体どれほどの歯を生え変わらせ使うことができるのでしょうか?
その数はなんと6万本です!サメは2~10日に1回、新しい歯に交換します。
サメの歯は、アゴ骨の内側にあり、新しい歯がどんどん作られて葉茎のエスカレーターに乗せられます。エスカレーターはじわじわと、外側に向かって動いていて、使っている歯もエスカレーターに乗って外に押し出され、抜け落ちます。そして次の歯の出番になるのです。

知られざるサメのヒミツ③サメの眼

実はよく見えている!光る眼!

サメを「狭目=(狭い目)」と漢字でも表すことがあります。
洞窟などの暗闇で生きている魚の仲間には、
眼のないものもいますが、サメ類には必ず眼があります。
眼の形にはいろいろなタイプがあり、海底近くで棲むサメは、
横向きの細長い眼をしています。海の中層や表層で生活するサメは、
丸い眼を持っています。
人と大きく異なる点として、サメは周りが暗くなっても良く見えます。
サメの眼には、網膜の後ろ側に「タペータム」
という小さな鏡があり、
人の場合、目に入った光は、レンズを通過して、
網膜にある光受容細胞(ひかりじゅようさいぼう)を刺激します。
人はここまでです。しかしサメの場合、目に入った光は網膜をとおり、
後ろの鏡で反射し、もう一度、網膜の光受容細胞を刺激するのです。
この仕組みによって暗い所でもよく目が見えるようになります。明るい昼間はこの鏡にカーテンが降りて光を反射しなくなります。

知られざるサメのヒミツ③サメの眼
知られざるサメのヒミツ③サメの眼

知られざるサメのヒミツ④サメの耳

サメにも耳がある!?

ヒトは「外耳(がいじ)」「中耳(ちゅうじ)」「内耳(ないじ)」を持ち、外から見えているのは「外耳」です。
サメにも実は耳があります。あるといっても、ヒトのように外耳があるわけではなく頭蓋骨の軟骨の中に「内耳」を持ちます。
しかも、サメの聴力はヒトより優れていると言われており、
私たちに聞こえない低音や高音まで聞き取ることができます。
サメは音の振動が皮膚や骨を通り抜け、直接、内耳に伝わっていきます。

知られざるサメのヒミツ⑤サメの鼻

プールに数滴たらした血も嗅ぎ取る!?

サメは、プールに数滴たらした血のにおいも嗅ぎ取ると言われますが、これは血液や筋肉を作るたんぱく質(アミノ酸)に鼻が強く反応するためで、100億分の1の濃度でも分かると言われています。
また、サメは、匂いからその方向を探知することも可能です。
左右の鼻で嗅ぐことで、その匂いの方向を確かめています。鼻は主に獲物の匂いを嗅ぎ取るための器官なので、どのサメも口よりも前にあります。

知られざるサメのヒミツ⑥サメのウロコ

一生のうちに生える歯は6万本!!

サメの肌はザラザラしていて紙やすりのようになっています。しかし単にザラザラしているわけでなく、頭の方からなでると滑らかで、後ろからなでるとザラザラしています。
この仕組みは水の中で速く泳ぐことに役立ちます。
サメたちは、体の表面を滑らかにして、水が流れるように鱗を小さくしました。また、皮膚と平行に並べ、鱗の表面に平行な隆起線を作りました。
しかし小さな渦ができ、抵抗がうまれます(造渦抵抗)。そこで鱗の下に隙間を作りました。渦は鱗の下の隙間に入ることで、消えます。
また、鱗にゴルフボールのような小さなへこみを作ることで抵抗を減らします。水の流れが滑らかになると、雑音が減り、獲物に音もなく近づくことができるようになったのです。

知られざるサメのヒミツ⑥サメのウロコ

知られざるサメのヒミツ⑦サメの第六感

シックスセンスがサメにはあった!!

サメには人にはない「第6感」があります。
その不思議な第6感を感じるのがロレンチーニ瓶(びん)です。
イタリアのロレンチーニさんが発見した器官で、
サメの吻部(ふんぶ)にあります。
サメの吻(ふん)をよく見ると小さな孔が沢山開いています。
それがロレンチーニ瓶の入り口です。ロレンチーニ瓶と言われるように「瓶(びん)」の形をしていて、
中にはゼリー状の物質が詰まっています。瓶の底には、
知覚神経があり、情報を脳に伝えます。

知られざるサメのヒミツ⑦サメの第六感

知られざるサメのヒミツ⑧サメのグループ分け

サメはなんと約500種以上もいる!!

サメは9の「目(もく)」と呼ばれる大きな分類群で分けることができます。
目(もく)はさらに科に、科はさらに属と種に小分けすることができます。多数繁栄した目(もく)のグループもあればたった1種しかいない目(もく)のグループもあります。
サメの仲間たちは、一言で「サメ」と言い表せないほど「生き方」も、「見た目も」、多様性に富んでいて、500種以上の個性豊かなサメたちをグループ分けするのは至難の業です。
9つの「目(もく)」で分けられた個性豊かなサメたち。
「えー!このサメとこのサメが同じグループなの?」
「全然見た目違うね!!」
と、驚くこと間違いなしです。

ダイビングの世界ではサメは「恐ろしくて、海で出逢いたくない生き物」というよりも、どちらかというと「魅力的で、出会ってみたい生き物」に当てはまるかもしれません。
ダイビングの世界では、サメの王国にすむ沢山のサメたちに出会うことができます。

ダイビングで出会うことのできる人気のサメ

(クリックで詳細を表示)

シロワニ

シロワニ

オスは1.9mでメスは2.2mで成熟し、4.3m以上になる。
主に小笠原の海で出会うことができます。
小笠原では通年シロワニを岩陰や洞窟内で見ることができるが、安定して見られるのは冬の時期です。ワニでないのに白いワニという不思議な名前ですが、れっきとしたサメの1種です。
「ワニ」というのは古くは山陰地方で「サメ」という意味があります。
因幡(いなば)の白ウサギの話ではサメがワニとして描かれています。
他にもサメのことを「フカ」と言うことがあります。
中華料理の高級食材「ふかひれ」は、サメのヒレのことを指すので、意味は「サメひれ」です。「ネムリブカ」や「ドタブカ」など、フカの名の付いた名前のサメも存在します。シロワニは強面で有名なサメで、体も大きいのでとても迫力があり、怖がられることもありますが、実はとても臆病でおとなしい性質のサメです。

アカシュモクザメ

アカシュモクザメ

オスは約1.5mで、メスは2.1m以下で成熟し、最大で4.3mになる。
ダイビングの世界ではアカシュモクザメという標準和名の呼び名よりもハンマーヘッドシャークという英名の方が呼び名としては身近かもしれません。
伊豆半島ほぼ南端の沖合、約10kmにある無人島「神子元島」の周辺は絶好の大物出現ポイントです。外洋にあるため、魚影の濃さが抜群のこの海では、毎年夏から秋にかけて、ハンマーヘッドシャークを始めとする様々な種類のサメが神子元海域にやってきます。大量のアカシュモクザメが川のように泳ぐ「ハンマーリバー」を見ることができます。

ニタリ

ニタリ

全長1.3m~1.6mで産まれ、オス、メスともに3m程度で成熟し、最大で4.2mになる。
尾びれが明らかに長い特異な見た目をしており、この尾びれは獲物の子魚を捕らえる際に振り回す武器として役立ちます。尾びれを自在に振り回せるように尾びれの付け根には、可動域を広げる役割のあるへこみが見られます。
外洋表層性のサメですが、ときに沿岸に近づき海岸付近で捕獲されることもあり、日本海、南日本、八丈島、青森県、太平洋側からの記録もあります。
希少なニタリに高確率で出会うことができる場所として、フィリピン「セブマクアン空港」からセブ市内へ向かい、車で4時間ほど北上し、港からボートで約30分の場所にある小さな島に「マラパスクア」と呼ばれるエリアがあります。

ドチザメ

ドチザメ

オスは1mで成熟し、最大で1.5mほどになる。
凶暴な性質ではなく比較的おとなしめで、水族館でもよく飼育されています。
千葉県館山・房総半島の海の伊戸漁港から約300メートル沖合に「沖前根」というダイビングポイントがあり、100匹を超えるドチザメと共に遊泳することができます。ここはシャークスクランブルと呼ばれる名所となっています。

ネコザメ

ネコザメ

最大で全長70cmほどになり、浅海の岩礁や藻場に棲みます。
あまり大きくないことや目の後ろらへんが大きく隆起する特徴がネコのように見えることからネコザメの名が付きました。ウニやサザエなどが好物でおとなしく、愛されるサメです。背ビレに大きなトゲがありよく発達しています。

オオセ

オオセ

最大で全長1mにもなります。底生のサメで、周囲の環境に溶け込む体の模様とひらべったさを持っているので、気がつかずにダイバーが通り過ぎてしまうこともあります。保護色で獲物に気づかれずに狩りをします。頭の周囲には多くの皮弁(ひべん)があります。

ツマグロ

ツマグロ

全長30~50cmで産まれ、オスは90~100cm、メスは95~110cmで成熟し最大では2mになる。サンゴ礁やその周辺に生息し、礁湖内など非常に浅い場所にも進入します。ダイビングではブラックチップリーフシャークの英名がポピュラー。
サメらしい姿をしたサメです。

ネムリブカ

ネムリブカ

全長50~60cmで産まれ、オス、メスともに1m程度で成熟し最大で2mになる。
水深40m程度までの岩場、サンゴ礁、砂泥底などに生息する。岩やサンゴの間に隠れてじっと隠れていることが多いです。基本的に攻撃的ではありませんが、執拗に手出しをする相手には攻撃することがあるようです。捕食活動のため、夜間活発となります。
ダイビングではホワイトチップリーフシャークの英名がポピュラーです。

サメは繁殖方法も多様性に満ちている

サメは繁殖方法も多様性に満ちている

サメは見た目だけでなく繁殖方法も、とても多様性に満ちていて、実に様々です。
サメは魚類です。一般に魚類の多くが、卵を産む「卵生」で子孫を残します。
対して私たちヒトや、海で暮らすイルカを含むクジラの仲間たちは、母親がお腹の中で子を育て、大人とあまり変わらない姿になってから出産する「胎生」で子孫を残します。
さて、「魚類」であるサメの仲間たちはどのようにして子孫を残しているのでしょう?

(引用元:サメ-海の王者たち-改訂版ブックマン社)

『パターン①卵生』

サケやイワシのような硬骨魚類は、メスが沢山の卵を産み、そこにオスが精子をかけるという「体外受精」を行います。
一度に産む卵の数は多いものになると数百万個にも及びますが、産卵後に親が面倒を見ることはなく、生き延びられるのはごくわずかです。
対してサメは「体内受精」です。メスの体内で受精が起きると受精卵は卵殻(卵のカラ)に入り、同時に細胞分裂が始まって、子供が育ち始めます。サメはここで卵を産みます。卵生であれば大きな卵を安全な場所にしっかりと固定するように産みつけます。現生のサメの4割が卵生と言われています。サメの卵の形は多様性に富んでいて、様々な形をしています。
親は卵を守らないので、子供だけで卵殻の中で育ち、孵化します。

『パターン①卵生』

『パターン②卵生・単卵生型』

卵殻に包まれた受精卵が輸卵管に移動すると、すぐに2個ずつ産卵されます。これが繰り返されるのが単卵生型の特徴です。
それぞれの輸卵管に1個の卵が送り込まれ、各輸卵管の卵が同時に産み出されます。したがって、一度の産卵数は2個というわけです。
単卵生は、ネコザメ目、多くのトラザメ類、一部のテンジクザメ目(もく)などに見られます。

・ネコザメ目(もく)
・トラザメ類
・一部のテンジクザメ目(もく)

『パターン③卵生・複卵生型』

複卵生型は、受精卵がしばらくの間、子宮(輸卵管の膨大部)に留まり、胚がある程度育ってから産卵されます。
卵は卵巣から定期的に排卵され、卵殻に包まれて子宮に送り込まれてくるため、子宮には複数の卵殻卵が溜まってきます。
卵は左右一組が同時に、そして定期的に排卵、受精され、子宮内で卵が順番に育っていることが分かります。成長段階の異なる複数の受精卵が、子宮内にとどまっている状態です。
その後ある時期に、後方の卵殻から順番に産卵されるというわけです。複卵生は卵が母体内でより長期間保護されるために、すぐに産卵する単卵生よりも、より進んだ生殖方法だと考えられています。
・トラフザメ・ナガサキトラザメ・一部のヤモリザメ類

『パターン③卵生・複卵生型』

『パターン④卵生・保持単卵生型』

単卵生のサメにもかかわらず、長期間母体の中で卵殻を保持して、孵化する少し前に透明な卵殻を産み落とします。

『パターン④卵生・保持単卵生型』

『パターン⑤胎生~自分と同じ姿の子を産み落とすサメ~』

現生のサメのほぼ6割を占めているのが胎生です。

サメの胎生はとても複雑で、母親の体内では信じられないようなことが起きています。サメの胎生は、栄養物質の起源により「卵黄依存型」と「母体依存型」の2つに分けられます。
胎生であれば、子供はすぐに独り立ちできるように充分育った状態で産まれてきます。胎生の場合、子供が親の4割程度もの大きさまで育つ種も存在し、妊娠期間も長いものでは約2年にも及びます。

『パターン④卵生・保持単卵生型』

『パターン⑥胎生・卵黄依存型~胎仔が卵黄の栄養を吸収するサメ~』

赤ちゃんを産むサメの中で、母親が栄養をあげないタイプです。
ツノザメ類、ジンベエザメは母ザメのお腹で育ちますが、栄養をもらえず、自分の卵黄だけで成長します。そのため最初から大きな卵黄を持ち、小さな体で産まれます。
最初、子供は母親の子宮(輸卵管)の中の、卵殻中で成長します。その後子供は卵殻から孵化し、子宮の中で大きく育ってから産み出されます。母親からは酸素などの供給は受けるものの、栄養的には、ほとんど独立していると考えられています。

・アブラツノザメ
・ジンベエザメ

『パターン⑥胎生・卵黄依存型~胎仔が卵黄の栄養を吸収するサメ~』

『パターン⑦偶発胎生~卵殻に包まれた胎仔を出産するサメ』

通常は卵生ですが、条件により母体内で、卵殻から孵化してしまい子ザメとして産出されるタイプです。逆に通常は胎生ですが、早産で卵殻に包まれて産出されるものもあります。
偶発タイプは卵生と胎生の境界線にあると考えられています。

『パターン⑦偶発胎生~卵殻に包まれた胎仔を出産するサメ』

『パターン⑧真正胎生』

偶発タイプ以外の「卵黄依存型胎生」を言います 。典型的な種はアブラツノザメです。
ホシザメもこのタイプに属しますが、生まれたときの体重が自分の持っていた卵黄の10倍にもなるそうです。この場合には、自分の卵黄以外の栄養物質を使わなければ、説明ができません。真正タイプも種によって他の生殖方法が組み合わされていて、そう単純ではありません。このタイプのサメとしては、カグラサメ目、キクザメ目、ツノザメ目、ノコギリザメ目、ドチザメ目などがあげられますが、それぞれ親と胎仔の間の物質交換を調べ、母体への質的量的な依存状態を確かめる必要があります。
イタチザメでは実際にこのような関係にあることが、近年証明されました。

・アブラツノザメ・ホシザメ

『パターン⑧真正胎生』

『パターン⑨胎生・母体依存型胎生~胎仔が、母体から栄養を受け取って成長するサメ~』

どの種も発生の初期は自分の卵黄で成長を始めますが、卵黄がなくなってからは母親から栄養の補給を受けながら育ちます。
母体依存型は、栄養の補給方法や栄養物質によって3タイプに分かれます。
①「食卵タイプ」②「子宮ミルクタイプ」③「胎盤タイプ」

・アブラツノザメ・ホシザメ

『パターン⑨胎生・母体依存型胎生~胎仔が、母体から栄養を受け取って成長するサメ~』

『パターン⑩胎生・食卵タイプ~胎仔が卵を食べて栄養にするサメ~』

ホホジロザメ、ネズミザメの胎仔は、同じ子宮内にある卵黄を食べて栄養にします。
このタイプのサメは卵黄を自分自身で食べて成長します。
子宮(輸卵管の膨大部)内で成長している子ザメは、次々と送り込まれてくる無精卵を食べます。卵黄を食べるために産まれる前の子ザメにも立派な歯が生えていて胎仔に指を噛まれた人もいるそうです。他にも食卵タイプのサメには、ネズミザメ目のアオザメ、オナガザメ類や、テンジクザメ目のオオテンジクザメ、メジロザメ目のチヒロザメなどがいます。

・ホホジロザメ・ネズミザメ・アオザメ・オナガザメ類
・オオテンジクザメ・チヒロザメ

『パターン⑩胎生・食卵タイプ~胎仔が卵を食べて栄養にするサメ~』

『パターン⑪胎生・共食いタイプ~兄弟を食べて栄養にするサメ~』

ネズミザメ目のシロワニは無精卵を食べるだけでなく、子宮内の兄弟姉妹も食べてしまい、その中で最強の1個体だけが産まれてくるという様式を取っています。

『パターン⑪胎生・共食いタイプ~兄弟を食べて栄養にするサメ~』シロワニ

『パターン⑫胎生・子宮ミルクタイプ』

このタイプのサメは、子宮壁から分泌される特殊な栄養物(子宮ミルク)を独特の構造物や皮膚を通して吸収したり、直接飲み込んで成長します。
・イタチザメ・ホシザメ
サメのほかにも、アカエイやイトマキエイ、トビエイ類などホシザメや他の卵食性依存胎生のサメ類もこのタイプの可能性があります。
・アカエイ・イトマキエイ・トビエイ類

『パターン⑫胎生・子宮ミルクタイプ』

『パターン⑬胎生・胎盤タイプ』

胎盤タイプのサメは、成長途中で自分の持っている卵黄を使い切ってしまうと、胎盤ができるまで一時的に子宮ミルクの補給を受けます。胎盤は卵黄嚢(らんおうのう)という、卵黄を包んでいた袋から形成され、栄養物質が胎盤とへその緒を通して胎仔に栄養を補給します。サメの胎盤は、哺乳類の胎盤と起源が異なりますが、機能は哺乳類の胎盤と同じです。魚類に胎盤型の生殖法が発達したという事実は、驚きと神秘に満ちています。
胎盤タイプは進化したメジロザメ目のサメだけにみられます。
・シロザメ・メジロザメ類・シュモクザメ類

『パターン⑫胎生・子宮ミルクタイプ』

サメは恐竜よりも昔から地球にいた?!

サメは恐竜が栄えた時代より、さらに遥か古代の時代である4億万年前の「デボン紀」という時代に、すでにこの地球の海にそのルーツが誕生していたと言われています。
サメたちは4億万年という長い時間を、多様性に満ちた高度な繁殖能力を駆使し、過酷なこの世界で、私たちの生きるこの現代まで、命を繋いできたのです。

地球の生物の大先輩として、ダイビングでサメに出会ったらむやみに怖がったり毛嫌いせずに、海にお邪魔しますと敬意をもって接しましょう。

もっとサメのことが知りたくなったら

(YouTubeチャンネル)「さめ先生サメの歌」を検索してチェック!
ずかんくんイラストとコラボした「ホホジロザメのうた/ラララさめのくに」もありますよ!

(参考文献・引用書籍)
・小学館図鑑NEO 魚(小学館)
・小学館の図鑑Z 日本魚類館(小学館)
・ポプラディア大図鑑 魚(ポプラ社)
・学研の図鑑 Live 魚(Gakken)
・講談社の動く図鑑move 魚(講談社)
・山渓ハンディ図鑑13 改訂版 日本の海水魚(山と渓谷社)
・山渓カラー名鑑 日本の海水魚(山と渓谷社)
・世界で一番美しい海のいきもの図鑑(創元社)
・日本産魚類生態大図鑑(東海大学出版会)
・日本産魚類検索 全種の同定 第三版(東海大学出版会)
・ラララさめのくに(さかだちブックス)
・サメ~海の王者たち~(ブックマン社)
・世界の美しいサメ図鑑(宝島社)
・ほぼ命がけサメ図鑑(講談社)
・サメ 巨大ザメから深海ザメまで(笠倉出版社)
・さめ先生が教える サメのひみつ10(ブックマン社)
・SHARKS 世界サメ図鑑(株式会社ネコ・パブリッシング)
・群馬県自然史博物館 第22回企画展「海の王者サメ」図録
・神奈川県生命の星・地球博物館 特別展「ザ・シャーク」図録
・以布利 黒潮の魚 ジンベエザメからマンボウまで(海遊館)
・奄美群島の魚類図鑑(東日本新聞開発センター)
・魚魚展2023~世界のサメ~展示(オガワアートコレクション)
・You Tubeチャンネル サメ社会学者RickyのFin-Tube「サメの繁殖様式は謎だらけ?
共食いに胎盤まで何でもアリなサメたちの多様な繁殖方法を徹底解説!」