寒かった冬が終わり、ようやく暖かい春がやってきましたね。
桜の花びらが舞う春は、新生活の始まりであり、そして新しい出会いの季節です。
今回は、ダイビングで出会える美しい日本の象徴「桜」の名に関する、とても日本らしい魚を紹介します。海中に舞う美しい桜吹
雪を見に行きましょう!
NAUI × ずかんくん
沢山知って、ダイビングを
もっともっと楽しんじゃおう!
はじめまして!このたび『ダイビング指導機関NAUI宣伝隊長』に就任いたしました!海の生き物大好き!イラストを描くのが大好き!ずかんくんです!
広い海にはどんな生き物たちが暮らしているのか?『沢山知って、ダイビングをもっともっと楽しんじゃおう!』をテーマに、毎回登場する生き物を変えながらお話していきます!
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「サンゴ礁の海」
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「ジンベエザメ」
第13回 ずかんくんコラム
「サクラダイ」
サクラダイと桜鯛で混乱??
今回は種としての「サクラダイ」を紹介します。
サクラダイとは別に、皆さんおなじみの「マダイ(真鯛)」という魚がいます。
3月~6月ごろに水揚げされたマダイは、夏の産卵期を迎える前に体の色が赤色からピンク色に変わります。そのときにオスは顔の周りに白い斑点が現れ、この姿が桜に似た淡い色や、斑点模様が桜の花びらのように見えることから、「桜鯛(サクラダイ)」と呼ばれ、春の風物詩の一つとして有名です。
両者にはサクラダイの名前が使われますが、サクラダイは「スズキ目ハタ科」に分類されることに対し、マダイは「スズキ目タイ科」に分類されています。
両者は違う種の魚を指すので注意しましょう。
サクラダイはオスメスで見た目が違う
サクラダイを含むハナダイ類は、メスで生まれ、成長後にオスへと性転換します。これを雌性先熟(しせいせんじゅく)と言い、鮮やかなオレンジ色をしていたメスがオスへと性転換します。
ハタやハナダイの仲間のほかに、ベラの仲間やブダイの仲間にもこのタイプの魚がいます。
性転換する際、体に花びら状の模様が浮かび上がります。
いきなり模様が変わるわけではなく、時間をかけてゆっくりと体が変化していきます。
性転換する理由は、群れのなかでもっとも大きくて強い個体が子孫を残すためと考えられています。
オスとメスの見た目が違うことから、かつては違う種の魚だと考えられていて、オスのことを「オンゴンサクラダイ」と呼び別の種としていたこともありました。
また、オスで生まれ、成長後にメスに性転換するものを雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)と呼びます。クマノミやコチの仲間、ハナヒゲウツボなどがこのタイプです。
オスの特徴は独特の斑紋と腹ビレの赤色班、糸状に伸びる(軟条)です。
メスは一様にオレンジ色で、背ビレのなかほどに黒色班があります。
サクラダイはハーレムを形成する
オスは、複数のメスを囲いハーレムを作ります。ハーレムのオスが死亡すると、ハーレム内の一番大きなメスがオスへと性転換します。
サクラダイ説明
(生息域)沿岸の岩礁域 浅所~深所
(分布)相模湾~長崎、八丈島
(全長)約14cm
サクラダイは長年、日本の固有種とされてきましたが、近年「台湾」や「パラオ」にも生息していることが判明しました。
ダイビングで人気なハナダイの仲間たち
ダイビングの世界で「ハナダイの仲間たち」という言葉をよく耳にします。
ハナダイの仲間たちは、学問的にいうとスズキ目ハタ科・キンギョハナダイ属・ナガハナダイ属・アズマハナダイ属などの15のグループに分けられた約40種類の魚たちを言います。ハナダイの仲間たちは、駿河湾からも約20種類ほど観察されています。
体色に黄・青・黒色などがちりばめられていて、サンゴ礁の仲間たちに負けないくらい美しく駿河湾でもとても目立つ魚たちです。
今回紹介したサクラダイのほかにどんなハナダイの仲間たちがいるのか、有名な種を一部紹介します。
もちろんサンゴ礁の海にも沢山のハナダイの仲間たちが棲んでいて、宝石のような鮮やかな色合いが美しくサンゴ礁で、華やかな群れを作ります。
(クリックで詳細を表示)
- 「キンギョハナダイ」
- 「ナガハナダイ」
- 「シキシマハナダイ」
- 「アズマハナダイ」
- 「スミツキハナダイ」
- 「アカオビハナダイ」
- 「スミレナガハナダイ」
- 「ケラマハナダイ」
- 「カシワハナダイ」
- 「ハナゴイ」
- 「アカネハナゴイ」
- 「ハナゴンベ」
「キンギョハナダイ」
(生息域)沿岸の岩礁域やサンゴ礁域の浅所(分布)南日本(全長)約11cm
「ナガハナダイ」
(生息域)岩礁域の30mより深場(分布)南日本(全長)約10cm
「シキシマハナダイ」
(生息域)沿岸の岩礁域、大陸棚縁辺、海山(分布)南日本(全長)約20cm ※駿河湾では水深70mほどの転石地帯に群れを作ります
「アズマハナダイ」
(生息域)沿岸の岩礁域やサンゴ礁域の浅所(分布)南日本(全長)約15cm ※駿河湾では水深70mほどの砂地に住んでいます
「スミツキハナダイ」
(生息域)沿岸の岩礁域やサンゴ礁域の浅所(分布)南日本(全長)約10cm ※駿河湾では水深90mほどの海底付近に住んでいます
「アカオビハナダイ」
(生息域)サンゴ礁域の水深10~58mに生息(分布)南日本(全長)約7cm ※駿河湾では水深50mほどで小さな群れを作ります
「スミレナガハナダイ」
(生息域)サンゴ礁外縁の岸周辺(分布)琉球列島(全長)約.8.8cm
「ケラマハナダイ」
(生息域)サンゴ礁域(分布)琉球列島(全長)約9.1cm
「カシワハナダイ」
(生息域)潮通しの良いサンゴ礁外縁(分布)南日本(全長)約12cm
「ハナゴイ」
(生息域)潮通しの良いサンゴ礁外縁(分布)八丈島、高知県、琉球列島(全長)約11.7cm
「アカネハナゴイ」
(生息域)潮通しの良いサンゴ礁外縁(分布)琉球列島(全長)約6.7cm
「ハナゴンベ」
(生息域)サンゴ礁外縁(分布)伊豆諸島、琉球列島(全長)約8.2cm
最後に
まるで神様が施したような色鮮やかで、美しいハナダイの仲間たちの世界はどうでしたか?お気に入りの一匹はみつけられましたでしょうか?
残念ながら、なかにはダイビングでは行くことができないような深場を好むハナダイの仲間たちもいるので、全ての種に海中で出会うことができませんが「キンギョハナダイ」は、水深10m前後の田子の「フト根」で乱舞状態の群れに出会うことができるので、ビギナーの方でも気軽にかわいいキンギョハナダイたちに会いに行くことができます!
そして今回、代表種としてご紹介した「サクラダイ」は、観察エリアが水深30~40mと深場になるのでアドバンスダイバー以上を保有していないといくことができません。そして美しいオスのサクラダイの群れが見られるのは、産卵行動をする9月~11月の期間限定になります。
※サクラダイのメスは通年観察できます。楽しいダイビングの練習を沢山積んで、とっても暖かい春!お花見のこの季節はぜひ日本が世界に誇る「海中の花見」としてサクラダイを観察しに出かけてみてくださいね!
・海のはくぶつかん 第19巻1号~第27巻6号(東海大学海洋科学博物館 1998)
・写真検索 釣魚1400種図鑑(KADOKAWA)
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・日本産魚類検索 全種の同定 第三版(東海大学出版会)