naui 50周年 ANNIVERSARY No.5 池田 睦夫

naui 50周年 ANNIVERSARY

連載第五回目は、日本における水中考古学調査のスタッフやITCスタッフなど、
様々な経験を踏まえ、20年前にオーストラリア、グレートバリアリーフへ。
女優・益戸育江さん(高樹沙耶さん)のITCコースディレクターも担当。
現在も、オーストラリア「ダイブセブンシーズ」で活躍中の池田睦夫氏
(NAUI INSTRUCTOR #2515)です。


オーストラリアで自然の中での池田睦夫氏。(写真には写っていないが、横にはワラビー<カンガルーの小型版>達が群れている環境)

「NAUI ITCの思い出」

瞬く間に時が過ぎ NAUI50周年を迎えたとのことまずはおめでたきことでございます。

私がNAUIのメンバーになったのは1971年第2期ITCに参加した時からとなります。

その年NAUIUS本部スタッフが見守る中、CD:田口様、TEAM LEADER:松岡様、本間様、講師:一条先生、山根先生、益田一様等そうそうたるメンバーにより10日間、完全合宿によるコースが伊豆海洋公園で行われました。

今では充実したマニュアルが揃い、関係資料も豊富で事前学習もスムーズにできますが、当時はマニュアルといっても項目が書かれているだけ、関係資料もほとんどないと言っていいような時代で、とにかくコース中の見聞全てが目新しく、そのことを吸収するだけでさえ精一杯というものでした。

また、NAUIでの伝統となった強いインストラクターを目指すため、体力を基本に徹底したスキル習得に向け、受講生は自主的に早朝から夕方暗くなるまでプールでのトレーニングをこなし、スタッフの方たちも仕方なくではあったと思いますがお付き合いいただいたものです。

そんなハードな日々の反面、夕食後はスタッフ、ダイビング界の諸先輩方が三々五々集まりアドバイスをいただいたり、ディスカッションをしたり、やがては飲み語り合う懇親の場も・・・。結局必然的に睡眠時間が割かれることになり、コース中の睡眠時間トータル10数時間という過酷なものになってしまいました。

ただ、この充実したコースを共有できたことが、その後の私のインストラクター人生の全ての基となる財産を得られたと感謝するとともに感慨深いものがございます。


義兄・故・松岡俊輔氏。彼の若かりし頃、会社名は言えませんが電気カミソリのコマーシャルで使われたものです。ひげの生えない彼はその後用もないのに毎日使っておりました

「ダイビングを始めたきっかけ」

私のダイビングライフの原点はNAUI設立時のメンバーでもあり、義兄でもある松岡俊輔に依ります。

まだ高校生のころ彼の熱く語るスキンダイビングの世界(そのころは公然とスピアフィッシングでしたが)に魅入られ“それならば自分でも”と仲間と始め、やがて自然の成り行きでスクーバダイビングへと。

松岡のスクーバ講習はとにかくしっちゃかめっちゃか、スキルの教え方は独特、クラスルームは知識が豊富、サービス精神がいっぱいなので、やがては脱線に次ぐ、脱線でベーシックなコースであるはずが終了するころにはITCかと思うほど広い範囲で薫陶を受けました。

そんな彼も今は亡き人となってしまいましたがあの若き日の鮮烈な熱き心が脈々と私の中に存在していると自負しています。


「私のダイビングライフ」

私のダイビングライフの中でレジャーの世界と別に職業ダイバーの世界の経験をすることになったきっかけもやはり松岡の影響でした

代表的な仕事としては画期的な日本で最初の水中考古学調査があります。これは1977年、NHKが企画し京都の水中考古学研究所が行った鴨島遺跡学術調査スタッフとしての参加でした。

梅原猛著「水底の歌」による、歌人:柿本人麻呂がそれまでの定説であった東北地方ではなく山陰島根県益田の沖合いにあったと思われる鴨島で最期を遂げた。という説の実証をということで行われた水中考古学調査です。この調査はそれまで陸上において何気なくされていた調査方法がわずか15mぐらいしかない水中ですることの大変さを痛感させられたことと、考古学者のダイバーがいなかったためダイバーを育てるということも平行してしなければならない苦労も重なってありました。数週間後には、始めは心もとなかった考古学者たちが立派にボート上と交信しながら調査できるまでになり調査としても成功した姿は感動的でもありました。

年を経て、そのときの調査団が母体となり1985年地中海シリアにおけるシリア沖古代遺跡発掘運営委員会へとつながっていったのです。この調査はシリアと日本の共同で行われNHKが主体となり後日“海のシルクロード”となり放映されました。

この内容に関しましてはこのシリーズ第2回小林保彦様が書かれていますので割愛しますが、1997年鴨島調査で活躍された考古学者の方々が中心となられたことは必然のことでありました。いまだに、あの、地中海30mの水底に初めて姿を現したアンフォラの壺を眺めたときのときめきは・・・今も心の中にあります。


プールサイドでITC終了時の写真です。
前列真ん中、お下げ髪の女性が、女優・益戸育江さん(高樹沙耶さん)です。

「現在のホームベース」

さて、そんな変遷を経て、私の現在のベースは世界遺産グレートバリアリーフの玄関口となるオーストラリアケアンズです。

そもそもこの地でダイビングビジネスを考えたのは日本人の持つ感性でGBRを紹介したいと思ったからです。そして早20年が経ちました。NAUIとの関連の中でこの地でのITCも数多くやらせていただきました。

その中には一時フリーダイビングの女子日本記録保持者にもなった、女優の益戸育江さん(高樹沙耶さん)もいました。彼女との出会いは古く20数年前にスクーバダイバー認定をしたのが始まり、多忙な彼女があるとき突然電話をしてきて「私インストラクターになりたいと思う」と、即座に「遊びのつもりならやめたら」。そんなやり取りのあとしばらくしてから「やっぱり私やってみる」ということで、多忙な仕事の合間を縫って日本〜ケアンズを何往復かして、見事にインストラクターに!ひたむきな取り組み方、努力、気力どれをとってもすばらしく最上のインストラクターが誕生したのです。

あの頑張りがその後のフリーダイビングへとつながっていったのでしょう。そんな彼女は今、自然回帰しそんな生活環境を実践しているようです。


私達の使用するボート上で、スタッフ達と一緒に。

「自然保護、地域活動」

地球の温暖化が言われていますが、このGBRも珊瑚への影響等かなり気になるところです。実際今年は例年に比べ水温の低下がかなり遅れ白化現象が広がっています。この数年遅ればせながらわれわれのホームグラウンドで珊瑚・生物等のデータを収集を行い、地元のMARINE PARK及びJAMES COOK UNIVERSITYが中心となって活動している調査に、連携協力しています。これはかなり長期的なものとなり私のライフワークとなることでしょう。

#2515 池田 睦夫氏